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高前田乾隆窯

〒988-0161
宮城県気仙沼市
赤岩高前田222

TEL.0226-23-6603

季節外れの薪割り

薪割り薪作り

今、燃料の松の木の薪作りをしています。

真夏の時季の薪割りは常識外の作業です。何故ならば、木は寒い時季に伐採されるので、これまで私は冬から春にかけて薪割りをして来ました。しかしながら、私が必要とする木材に関する状況が変わって来たのです。

私は、登り窯の5つの部屋を全て木材を燃料として焚いています。始めの部屋には作品は入らず、ここで1昼夜空焚きをして、次の部屋の中に入っている作品の水分を取り除き徐々に部屋と作品の温度を上げて行きます。ここで焚く燃料の薪は製材所から調達して来ました。それは、背板と言って建築に必要な部材を取った後に出る物です。

私はこの背板を焚く時間帯に合わせて細い物から厚い物に変えて行き、高温にすべき攻め焚きの時間帯には、梁や桁と言う太い部材を取った後の赤松の背板を焚くのです。

ところが、この赤松の背板の入手が困難になって来たのです。その訳は、梁や桁を必要とする日本の在来工法で家を建てる人が少なくなっているのです。

私が長年にわたり背板の調達を依頼して来た製材所は、製材する事を止めることになり、どうしようか思案しているところに、私の窮状を聞きつけた方が、立派な松の背板を運んで来てくださったのです。気仙沼市内の山間部に住まわれる方で、ご自分の家の増築のために製材した松の背板とのことです。

私に取っては、天からの贈り物と思うほどの喜びです。早速、束ねてある太い番線を切り乾燥の作業に取り掛かると、中には厚みのある松の背板がたくさん入ってるではないですか。しかも、今年 2月に製材したとのことながらも、松の木はまだ生気が残っていて、作品の入っている次の部屋を焚く時に必要な薪が取れそうな背板もあります。

その背板をチエンソーで45センチの長さに切ってもらい、マサカリで大割をして更に小割りをするというのが薪作りというのです。

何故、薪作りと呼ぶかと言いますと、ただ木を切って割るのではなく、節や曲がった部分を除き、投入しやすいように長さと太さも整えて行く作業だからこそ、私は薪作りと呼んでいるのです。

新しく割った薪と背板が乾燥すれば、秋には安心して窯焚きが出来ます。多くの人たちそして土にも木にも心から感謝して、いよいよ制作に取り掛かります。