
今年の春の到来は早く、桜の花を見ながら窯詰めをして4月20日21日の本焼きとなった。
恒例の5月3日から6日までの「林間作陶展」も、例年ならば会場周囲の雑木の林がピンク色がかった新芽で彩られて、来客も作品も一体となったような心地よい雰囲気を作りあげてくれるのが、今年は初夏の爽やかな作陶展になった。
一段落して、久しぶりに気仙沼市の北東部に位置する唐桑の海を見に行ってきた。海というより、瞬時に変化する海と岩の姿が見たかった。
快晴ではなくやや肌寒い日だったが、私が求めていった「荒磯海」が唐桑の半造にあった。10年ほど前の半造は、松食い虫にやられて見るに忍びない姿となった黒松の足元で太平洋の波が荒れ狂っているかのようだった。
今回目にした松は虫の害に耐え抜きスックと立ち上がっていた。そして新しく芽吹いたものと思われる2メートル前後の若い松の姿をも見ることができた。どこか古い友人に再会したような心持ちだった。
海と岩をスケッチしているところに2羽のカモメが海上を飛び去った。港で人に餌をねだるあのカモメの姿と飛び方とは全く違う、生きているカモメの姿を見ることができたと思った。
肌寒い休日のせいか半造の海辺に人の影はなく、私1人が荒磯海と対話をして多くの学びを得て帰ってきた。
唐桑の半造の海からの印象を「荒磯海」の題名で水彩印描で作品とし、他の2点とともに6月15日から21日までの上野の東京都美術館で開催される「平泉会選抜展」にすることにした。