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高前田乾隆窯

〒988-0161
宮城県気仙沼市
赤岩高前田222

TEL.0226-23-6603

夏の仕事

紫陽花

ここ高前田に登り窯を造って46年になる。8月になると47年目に入るが、今も登り窯の火を絶やさずにこられたことに感慨を覚えている。歳は若く気負うところもあり、当初には1年に4回も窯を焚いた事もあった。その後の窯焚きの回数は年3回に落ち着き、窯焚きにも季節ごとの楽しみや喜びを感じていた。

中でも夏の窯焚きは深夜1人で火を見つめ続けているので、火の熱さと睡魔との闘いはとても苦しいものである。それだけに夜明けに一斉に鳴き出すヒグラシの声は、自分への励ましのようにうれしいものだった。長く続いて来た年3回の窯焚きも70歳代になって夏の窯焚きで2回熱中症になった。

以後10年程前から夏の窯焚きはせずに来たが、今年の春の窯焚きで145回を数えるに至った。

夏の窯焚きがなくなった分だけの時間は、陶の仕事と絵画制作そして山家周辺の観察に費やすことが出来ている。ここで仕事を始めた46年前頃の夏は、8月のお盆が来ないとミンミンゼミは鳴き出さなかった。しかしこの10年程前からは8月に入ってすぐに鳴き始め、今年は7月22日にミンミンゼミの初鳴きを聞いたのである。

トンボもそうだ。夏の代表のムギワラトンボやシオカラトンボそしてオニヤンマの姿は見られず、7月頃から赤トンボが草原を飛び交っている。温暖化と言われて久しいが、やはりそうなのかと思っている。
トンボ
そんな中いつもと変わらないのはアジサイの花である。アジサイといえば梅雨の時期の花と連想されがちだが、ここ我が山家周辺のアジサイはヤマユリとともに心和む美しい夏の花である。

毎年、季節は四季それぞれに変化することは自然の摂理であり、人間も同じ自然界の生きものならばそれに順応して生活することは当然だと思うものだが、科学の進歩が「便利」を通り越して人間性を失ってしまうような状況になってしまう事だけは勘弁してもらいたいものだ。