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高前田乾隆窯

〒988-0161
宮城県気仙沼市
赤岩高前田222

TEL.0226-23-6603

薪作り

陶芸活動をはじめて48年。新年の仕事始めは薪作りが恒例のようになっていた。薪を作る松材は長い間気仙沼市の森林組合からの調達でまかって来たが、東日本大震災の影響もあってか、住宅建築の状況も変化して松材に対する需要が少なくなり、森林組合からの調達は松丸太も製材で出た背板も購入できなくなった。

あわせて、松食い虫による松の木の被害が蔓延して、私の陶芸活動も悲観的な状況に落ちいった。しかし、個人で松山を持っておられる数人の方がたの理解と協力でここ10年間ほどは登り窯の火を絶やさずに来ることができた。

一方、松の木の伐採には友人が協力してくれたものの、いかにチエンソウの技術のプロフェッショナルでも、寄る年波には勝てないもの。友人は高校時代の級友であり、共に80歳台に入って急激に足腰の力が弱くなった。

仕事というものは、力があればでき金になるから良いというものでもない。本当の仕事は、成し得た後に充実感や喜びを感じることである。そうした満足感を満たせることが出来ずに仕事を続ける事は怪我や病の素となってしまう。

私の陶芸活動もそろそろ終わりの準備の時が来たのかと思う日々が続いたが、幸いなことに今年は、私の陶芸活動を理解してくださる製材所の社長さんが、私の要望通りの松丸太を届けてくださった。

届いた松丸太は「うら」とも呼ぶ幹の先の方で直径25センチ前後幹元で30センチ前後、そして長さは4メートル。この松丸太を45センチの長さに切り揃え、マサカリで大割をし更にエル字型の木割りで細い薪を作るのである。

メートル法が基準とされている現代でも、在来建築の現場ではまだ尺貫法が生きている。長さ1間(180センチ)の板を必要とする人には2メートルの用材を提供している。細工をする時のために余裕を持たせているのだ。

私は、4メートルの松を45センチの長さに切っては8個しか取ることが出来ないと思いながら、45センチの物差しを持ってシルシを付けてゆくと9個取れることがわかった。梁や桁の長い部材は繋ぎ合わせる部分にも多くの容積が必要であり、2間の用材には40センチの余裕を持たせているということだ。

今回、私のところに届いた松丸太は更に5センチのオマケがついていることを知って、私は、伐採された人の心遣いに感じいったのである。

目立った節を取り除く手間もかかることなく、4メートルの松丸太 10本を、チエンソウ扱いのプロの友人は1時間半で切り終えた。そして友人は、うっすらとかいた額の汗を拭きながら、「終わったね」と快い笑顔を見せてくれた。