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高前田乾隆窯

〒988-0161
宮城県気仙沼市
赤岩高前田222

TEL.0226-23-6603

11月を振りかえって

窯に火が入る

忙しい毎日だったが、あっという間のひと月でもあった。3日に素焼きして11日の本焼きの火を入れるまでの7日間は、現在の自分にとっては心身共に大変な毎日だった。それは、18日に火を入れる予定が、いろいろに事情で1週間早く火入れをすることになったからだ。

4日から6日の3日間に釉薬を掛けて、7日には午後から仙台に向かって車を走らせ、夜の晩翠画廊の20周年のパーティに出席して、翌日8日は午後から窯詰めに取りかかった。通常、登り窯に窯詰めをするのに一部屋で2日を要する。今回も三部屋の焼成を予定していたが、二部屋に変更して11日に本焼きの火を入れた。

今年は、仕事を始めて39年目。来年の夏が来ると満40年になる。

今年の夏は雨降りの日が続いて、原料の地元の土の乾燥が進まなかったり、せっかく乾いた燃料の薪に再び湿気が戻って、と心配の多い夏だった。しかし、本焼きの火を入れて炎にも生き生きとした燃えが感じられて、安堵して窯焚きを続けることが出来た。

11日の朝に火を入れて、2人の手伝いの助けで12日の午後には、登り窯の二部屋を焚き終えることが出来た。

よく、人に「窯出しが楽しみですね」と言われる。楽しみは事実であるが、安堵という点では、無事に窯焚きを終えた時が何よりもうれしいものだ。

焼き上がった作品

ほっとした気持ちを持って、22日には仙台に行く。名掛丁のVILEVANにジャズを聴くために。僕にとっては、単に息抜きということではないのだ。音楽や絵画に接することで、自分の感性の向上にも役立つ、いわば研修でもある。

ジャズ

「ORGANIC BOP!!」と銘打った太田剣(サックス)、河合代介(ハモンドオルガン)、大槻KALTA英宣(ドラムス)の演奏は、疲れきった心身に回復と新たな活力を与えてくれた。演奏のほとんどがスタンダードナンバーだったことがうれしかった。スタンダードナンバーは多くの人が耳に馴染んでいる分、演奏する側にも緊張感があるものと思う。しかし、この3人の演奏家は、その力量を余すことなく発揮して、独自のジャズ音楽を作って聴かせてくれて、終始割れんばかりの拍手喝さいを浴びたのである。

陶芸に於いても同じことが言えよう。同じような作品が長いこと作り変えされて来た。基本を忘れない事は大切な事ではあるが、その中に注ぎ込む個性もなければならない。

多くの音楽や絵画に学び、地元気仙沼の土の味と、自分の感性の融け合った作品作りに、精魂を込めたいと思ったこのひと月でもあった。