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高前田乾隆窯

〒988-0161
宮城県気仙沼市
赤岩高前田222

TEL.0226-23-6603

台風といえば

台風といえば

8月12日台風5号は三陸沿岸岩手、宮城の県境付近に上陸し岩手県内陸部に大雨を降らせている。台風といえば、毎年この時季に思い出す忘れ得ぬ事がある。

1959年(昭和34年)9月の伊勢湾台風である。伊勢湾台風の直接的な被害はなかったものの、関連事象の影響は今でも忘れることができない。

当時私は気仙沼水産高校の3年生で、9月の初め頃に東京築地の東都水産という会社の入社試験を受けた。そして入試の結果が届いたのが伊勢湾台風の真っただ中の9月26日だった。その頃私の家族は父の実家の離れでの借家住まいだった。

伊勢湾台風の上陸は和歌山県の潮岬というから、東北までは1000キロメートル位の距離があると思うだが、26日の夜に結果が届いたと記憶している。何故ならば、母に台風が来るから雨戸が風で飛ばされないようにロープで縛ってくれと命じられたのだ。当時父は下駄作りの職人で、岩手県の細浦で出稼ぎをしていたはずで私は大降りの雨にずぶ濡れになりながらロープで戸板を縛った記憶がある。

その頃はまだテレビを見て台風の状況を確認することは出来なかった。せいぜいラジオを聞いて台風の動きを知る程度だった。私の家族も身を潜めるように台風の通過を、待つしか方法がなかった。その時、入社試験の結果が届いたのである。まだ各家に電話が普及していない時代、この地域の家の多くが有線放送を利用していて、私の合格通知も父の実家に有線放送で「大雨で電報を配達出来ないので」と送信されたのであった。

水産高校には、実習という科目があり年に1、2度校外の企業で作業をして単位を取得する。採用された企業での実習も同じことで、年末の2カ月東都水産に行くことになっていた。しかし、その直前に1960年の1月に変更になった。そして正月もまだ明けていない4日に私は上京して驚いた。なんと採用になった、愛知県蒲郡市にある三谷水産高校の実習生2人が、伊勢湾台風で校舎が被災したために、秋からずっと実習を続けていて、それ故に私の実習が変更になったのである。

自然災害はいつ起きるかわからない。その防備も必要な事だが、自然の力その動きとの向き合い方も多方面から考え対応することが重要なことだと思う。そして新たな変化や関係にも進取の心構えで取り組むことが望ましいのではないかと思います。

東都水産株式会社には10年勤務して自分なりに新しい道を求める事になるが、その後の人生の基礎はこの10年間に培われたものと思っています。